ホーム お役立ちコラム 入稿前に確認!Illustratorでつくる完全データ作成の流れとポイント
公開日:2022.07.04
入稿前に確認!Illustratorでつくる完全データ作成の流れとポイント
印刷会社に印刷物を発注する際は、「完全原稿(完全データ)」で入稿することが一般的です。
完全原稿(完全データ)とは、印刷会社での手直しなしでそのまま印刷・加工作業に入れる原稿、つまり不備の一切ない原稿を指します。
印刷開始前に再確認や修正などが入れば納期が遅れてしまうため、正確なデータで入稿することは重要です。
しかし、原稿作成には解像度やトンボ、塗り足し、カラーモードの設定など注意すべきポイントが多数存在し、慣れていない方は混乱してしまうことも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、印刷注文から納品までをスムーズに行うため大切な、Illustratorでの完全データ作成の流れについて解説します。
アートボードをつくる
まずは「アートボード」を作成します。ここでのチェックポイントは「サイズ」と「カラーモード」の2点です。
新規アートボード作成の手順
- illustrator(イラストレーター)を起動する
- 「ファイル」で「新規」を選択
印刷会社によってはIllustrator用のテンプレートデータを用意しているところもあります。
ポスター・パネルのデータなら問題なく作れるという方も、例えばシール印刷などは印刷会社によって印刷可能な範囲が異なる場合もあるので、テンプレートがある場合はぜひそちらを活用しましょう。
>【キンコーズ】各種テンプレートのダウンロードはこちら(ポスター・パネル、名刺など)
チェックポイント① サイズ
サイズは「仕上がりサイズ」で作成しましょう。
アートボードの向きにも注意してください。
チェックポイント② カラーモード
カラーモードが「CMYK」になっていることを確認しましょう。
通常、PCのモニタ画面はRGBで表現されています。
しかし印刷物はCMYKで表現されるのが一般的です。
CMYKはRGBに比べて表現できる色が少ないため、カラーモードを間違えてしまうとイメージしていた色とは異なる色で印刷されて、失敗してしまうことがあります。
また、CMYKでデータを作成しても画面で見ている時と印刷したときではイメージに差ができることがあるので、印刷会社に依頼する場合は「色校正」をすることをおすすめします。
トンボと塗り足しの確認
一般的なプリンタでは、印刷すると必ず白いフチができます。フチなしに仕上げたい場合は、仕上がりサイズより少し大きい紙に印刷して、4辺を断裁する必要があります。そのためにデータを作成する際必要なのが「トンボ」と「塗り足し」です。
「トンボ」は白いフチをカットする際のガイド線です。トンボが無いと文字切れ・画像切れ、白フチが残ってしまうなどの原因となります。
また、「塗り足し」はカットする際に端までキレイに背景が印刷されるように、仕上がりサイズより少し大きめに背景を作っておくことです。
トンボの作成方法
トンボの作成方法を解説します。ここでは、A4サイズのデータを作成することを想定して画面のイメージをお見せします。
- 「長方形ツール」で仕上がりサイズと同じサイズの枠を作成する
- 作成した長方形の塗り・線を「カラー無し」に設定する。
- 作成した長方形とアートボードの位置をピッタリ合わせ、選択した状態にする。
- メニューの「オブジェクト」>「トリムマークを作成」をクリック
- これでトンボの完成です。
塗り足しの設定方法
次は塗り足しの設定方法です。
メニューの「ファイル」 > 「ドキュメント設定」の中の「裁ち落とし」で塗り足しサイズを入力しましょう。
塗り足しのサイズは一般的には3~5mm。印刷会社により異なります。キンコーズでは3mmの塗り足しを推奨しています。
解像度に気を付けて画像を作成
解像度ってよく聞くけど、実際何なの?という方もいるでしょう。「解像度」とは、「画像や写真、映像のデータを構成する密度」を指しています。解像度が高いと画像がきめ細かく綺麗に表現されているように見えます。
ただし、ただ高解像度にすればいいというわけではありません。高解像度の画像はその分容量が大きくなり、いざ入稿の時印刷会社にデータを渡せないなんてことも…。大切なのは「適切な解像度で画像を作る」ことです。
適切な解像度の目安
印刷の仕様 | 解像度の目安 |
カラー | 300~350dpi |
白黒 | 600~1,200dpi |
白黒印刷かカラー印刷か、サイズによっても適切な解像度は変わるので、詳しくは下記をご覧ください。
>(あわせて読み)画像の解像度とは?サイズ目安や確認方法、印刷データ作成時の注意点について解説
Illustratorでの解像度の確認方法
Illustrator編集画面上の、画像を選択するとコントロールパネルに解像度が表示されます。(※dpiとppiは同じ意味です)
フォントのアウトライン化
テキスト部分のフォント(書体)をアウトライン化しましょう。
テキストデータは、デザインソフト上で入力したままの状態だと「文字」として認識されます。この文字情報を消し、「図形」として認識されるように変換するのがアウトライン化です。
実際にアウトライン化するまでにもいくつかチェックするポイントがあるので、順番に見ていきましょう。
もしアウトライン化されていないとどうなる?
そもそもフォントは、それぞれのパソコンにあらかじめインストールされたものです。データを作成したパソコンと印刷会社のパソコンではインストールされているフォントが異なるため、「文字」のままだと別のフォントに置き換わってしまうのです。
もしフォントが置き換わった場合、改行が変になったり文字化けの原因になったりするので、アウトライン化は必ず実行しましょう。
ただし、アウトライン化するともう「文字」として編集することができなくなってしまいます。後で文字修正ができるようにアウトライン化する前のデータを別名保存で残しておくことをおすすめします。
オブジェクトロックの有無を確認しよう
データの作成作業中に動かしたいオブジェクト以外も動いてしまって面倒…そんな時オブジェクトロックが利用されます。
ただし、オブジェクトロックがかかったままだと画像・文字がアウトライン化されず印刷時のエラーの原因になってしまいます。
オブジェクトロックを解除するには、
メニューの「オブジェクト」>「すべてのロックを解除」をクリックしてください。
もしこの項目がグレーアウトして選択できない場合はロックがかかったオブジェクトは無いということなので、次のポイントに進みましょう。
レイヤーロックの有無を確認しよう
レイヤーロックもオブジェクトロックと同様の問題が起こりうるので、アウトライン化の前にチェックしておきましょう。
レイヤーパレットを開く
↓
右クリックでメニューを表示
↓
「すべてのレイヤーをロック解除」をクリック
以上でレイヤーロックは解除されます。
フォントのアウトライン化
メニューの「選択」 >「すべてを選択」をクリックし、全てのオブジェクトを選択状態にする
↓
右クリックでメニューを表示させる
↓
「アウトラインを作成」をクリック
これでフォントのアウトライン化は完了です。
なお、「すべてを選択」はオブジェクトロック・レイヤーロックがかかっていないオブジェクトを全て選択する操作です。
ロックがかかっているレイヤーがあると、レイヤー名の右側に表示された色付きの□が少し小さく表示されます。
ちゃんと全選択されているか確認する際に役立つので覚えておくとよいでしょう。
フォントのアウトライン化の確認方法
それでは、フォントが全てアウトライン化されているか確認しましょう。
メニューの「書式」>「フォント検索」をクリックし、下図青枠部分にフォントが表示されなければ問題なくアウトライン化がされたことになります。
もしフォントが残っていたらアウトライン化するときロックがかかってしまっていた等で漏れた可能性があるので、ロックが解除されているかから改めて確認しましょう。
画像の埋め込み
アートボード内に配置した画像やリンク画像は、そのまま印刷してしまうとずれたり、リンクが切れて画像が表示されない原因となります。
配置した画像を作成したデータに埋め込み、一つのデータにすることを「画像の埋め込み」と言います。
こちらも実行しておかないと印刷のエラーや、印刷会社とのやり取りが増える原因となるのであらかじめ必ずチェックしましょう。
リンクパレットを表示
まずリンク画像を管理するための「リンクパレット」を表示します。
最初から表示されている方もいるかもしれませんが、
表示されていない方はメニューの「ウィンドウ」>「リンク」を選択して表示させます。
赤枠のようにマークが出ている画像はリンクに問題のある画像ということになります。
画像の埋め込み
リンクパレットの右上の三本線マークをクリックするとメニューが表示されます。
その中から「画像を埋め込み」をクリックすれば画像の埋め込みは完了です。
画像を埋め込みたくないときは?
そもそもリンク画像とはIllustratorではない別のファイルに画像があり、そこから画像を読み取っている状態の画像のことです。印刷の際はエラーの原因となりますが、Illustrator上で作業している時はメリットもあります。
- 作業がスムーズになる
- 画像に修正を加えるとIllustrator上の画像も修正される
リンクしている状態だとIllustratorは読み取っているだけなので、画像データ分の負荷がIllustratorにかかりません。また、元の画像に修正を加えると、Illustratorがその修正情報も読み取ってくれるので勝手に修正が反映されます。そのため、配置する画像が多い時や、修正が多い時にリンク画像は活躍するのです。
もし印刷会社に依頼するとき、「この後まだ修正が入るけど一度印刷して確認したい」などの理由で画像の埋め込みをしたくない場合は、IllustratorのデータとIllustrator上に配置されている画像一式をセットにして印刷会社に入稿しましょう。
データの保存形式
キンコーズでは、Illustratorで作ったデータの入稿の際、「Illustratorのデータ」と「PDFのデータ」の両方を入稿いただくことを推奨しています。
※入稿データにより手数料が変わります。PDF入稿は550円/1ファイルですが、PDF以外のIllustratorなどのデータのみの場合2,200円/1ファイルかかってしまいます。
できるだけ手数料を抑えるためにも、ここではIllustratorとPDFの保存形式について解説します。
Illustratorの保存方法
①メニューの「ファイル」>「別名保存」をクリック
②保存先を選択
③ファイル形式が「Abobe Illustrater(ai)」になっていることを確認し、保存する
④「Illustratorオプション」のダイアログが表示される
⑤「オプション」の「PDF互換ファイルを作成」にチェック
この「PDF互換ファイルを作成」にチェックが入っていないと印刷会社に入稿した際、データが開けないなどのエラーが発生することがあります。
➅OKをクリック
PDFの保存方法
①メニューの「ファイル」>「複製を保存」
②保存先を選択
③ファイル形式「Adobe PDF(pdf)」を選択
④「Adobe PDFを保存」をダイアログが表示される
⑤「Adobe PDFプリセット」で「PDF/X⁻4 2008(日本)」を選択
➅左メニューにある「トンボと裁ち落とし」を選択し、「すべてのトンボとページ情報をプリント」と「ドキュメントの裁ち落とし設定を使用」にチェックを入れる
⑦「PDFを保存」をクリック
以上でPDFでの保存ができます。
保存後は印刷会社への入稿前に必ずIllustratorの元データと見比べ、色味が変わっていないか、レイアウトの崩れなどが起こっていないか確認するようにしましょう。
まとめ
さて、皆さま入稿用のデータは作成できましたでしょうか?
Illustratorでデータを作成し印刷会社に入稿するのは難易度が高いですが、今回ご紹介した手順でポイントを押さえながら作成できれば、印刷会社への入稿は問題ないでしょう。
ただ、たとえばトンボを付け忘れたり、アウトライン化を忘れたりといったちょっとしたミスが原因で再入稿になったり印刷会社とのやり取りが煩雑化することがあります。納期遅れや余計な費用が発生する原因にもなります。
データを作成する際は一つひとつチェックしながら注意して行いましょう。
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